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脳内バックパッカー

自宅にいながら映画や本の世界で旅をしよう

丹精込めて英才教育した弟が「部屋がフィギュアだらけのオタク」になってしまった話

雑記

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僕には7つ下のかわいい弟がいる。

7つも年が離れていると、正直あまり遊ばない。

なんせ弟が生まれた時、僕は小学生だ。

弟がやっと小学生になった時、僕はもう中学生。

 

それに大消費社会の現代では時代の移り変わりが早すぎて、育ってきた環境は同じなのに価値基準が大きく違ってしまう。

例えば昭和末期に生まれた僕の神はドラゴンボールであったが、弟の神はワンピースだ。僕はBSアニメ劇場を毎日見ていたが、弟が物心ついた頃はアニメが徐々に深夜に追いやられていた。僕は若貴ブームや小室ファミリーの隆盛を知っているが、弟は不良横綱朝青龍を見ながら「世界に一つだけの花」を学校で歌っていた。僕はワールドカップ出場の有り難みを体で知っているが、弟は自国開催が記憶のスタート。おかあさんといっしょのお兄さんは違うし、スーファミとプレステ2、VHSとDVD、父ちゃんの車も違った。

要するに7年の差はそれほど違うのだ。あと弟はガジェット警部とか知らんし。

 

まあそんなことで兄はその絶大な権力により、弟はドラクエのレベル上げやアルゼンチンバックブリーカーの上の役、果ては遊戯王カードロンダリングなどをやらされていた。

※遊戯王カードロンダリングとは、兄(中学生)がブルジョア同級生から不要なカードを大量にもらい、それを弟(小学生)が同級生に捌いて、より良いカードを得るという世代間お小遣い差をうまく利用した究極の兄弟連携プレー。僕達兄弟は遊戯王カードではじめて経済を知り、そして自らの階級を知った。

 

 

英才教育

兄は高校生時代、映画や漫画やゲーム、そしてネットの海に、その青春を(勉学からの逃避という助勢を得て)注ぎ込んだ。

田舎の高校生のことなので案の定かぶれてしまい、ひどい時には道行く人々の顔が皆、横山三国志のように誰が誰かわからなくなるくらい精神を病んでしまう時もあった。

 

そんな中で兄は高校、大学、社会人を経るまでの間、弟に英才教育という名の「主観のゴリ押し」を施した。

情報戦と物量では全く相手にもならない弟は、兄から降り注がれる偏向的な「洗脳爆弾」により、着実に教育されていった。

小学校高学年から中学生という多感かつ一番物欲に喘いでいる時期に、兄からのDVDや漫画や説法は弟を十分満足させたようであった。

 

洗脳爆弾の一例

AKIRA

AKIRA コミック

機動警察パトレイバー 劇場版

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

あさま山荘1972

テロルの決算

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン

耳噛じる

寄生獣

ベルセルク

ウルトラヘヴン

...etc

 

 

そして部屋に異変が起こった

就職して実家を離れ、しばらく見ない間に弟の部屋が魔窟と化していた。

僕はいわゆるオタクに偏見はない、というかオタク趣味がある人としか喋れないくらいなのだが、オタクにも主義があって、僕はどちらかというと「サブカルチャー右派」だと自認していた。※ここでオタクとは?の議論はナシよ。

ガンダムは機動戦士しか認めないし、初音ミクよりラムちゃん派だし、ルパンの服は緑一択で、出崎イズムの信奉者であり、ロマンシングサガよりクロノトリガーだし、北斗の拳はラオウ編までが至高だし、親日より全日だし、ANAよりはJALだし、コーヒーは豆から挽いたブラックで、納豆の醤油は混ぜた後にかけるタイプだ。

 

だから正直、美少女モノというかそういうのは「カードキャプターさくら」くらいで卒業してしまった。これは「中二病的硬派気取り」という一種の「あのぶどうは酸っぱいや作戦」でもあるので悪しからず。

 

では久しぶりに開いた弟の部屋はどうだ!?

なんかピンクやら赤い髪の際どい格好のお姉ちゃんや幼子の傀儡が所狭しと戦列を組んでいる。

あれだけ井上日召や北一輝の話を吹き込み、スターリンや毛沢東の笑えない面白エピソードを伝授し、カストロとゲバラの行軍の真似事までさせた僕の弟はどこに行ったのだ!

あれだけドーラや富嶽の詳しい説明を聞かせ、ガトーの名台詞を何度も拝聴し合い、ツァーリ・ボンバの凄さを語り、共にジョーの光るゲロを見た弟の部屋がだいたいピンクに染まっていた。

 

そしてそんな変わり果てた弟に薦められたのが、

 何だよこれ・・・糞面白いじゃん!!!

 

 

 

 

最近のオタク事情

弟曰く、最近の若者はオタクやマニアというレッテルは別に恥ずかしくもなくオープンな存在であるという。

お兄ちゃんの時代はまだ高校生で「フラウ・ボゥって怪力だよな」とか話してたら、女子にひかれるレベルだったぞ。

かくいう弟も、兄と違って非常に交友関係も広く、リア充に近い存在だ。

 

兄はもうアニメは見ずに難解な哲学書を古書店で買い漁ってはわかったふりをするのが日課の象牙の塔移住希望者に落ちてしまったが、弟は深夜アニメをリサーチしながらオンラインゲームやフィギュア集めに勤しんでいる。

兄が基礎もわかっていないのにアルチュセールなんか買って埃吸着シートにしちゃってる合間に、弟はおすすめアニメをゴリ押ししてくる。

 

時代はとっくに変わったようだ。

アニメとは対局に位置したヤンキーが、「ワンピース、マジ最高」とか言ってるご時世である。彼らは老人Zとか知らないだろうが、アニメが身近にある存在のようだ。ビーバップハイスクールとか、ろくブルとか、WORSTとか読むだけじゃないのね。

要するにアニメや漫画に市民権が与えられ、サブがカルチャーに踊り出たのだ。ヴィレッジヴァンガードがイオンにあるくらいだから、そのうちマイルドヤンキーのジャージの後ろにイデオンとか描かれるかもしれない。

オタクというカテゴリは、消費財になったわけだ。昔からそうだったわけだが、湿っぽい記号は破り捨てられ、立派な商品になったのか。

そして深夜アニメのように先鋭化されたものも、弟の話を聞くに弁証法的に消費されているようだ。

アオイホノオで描かれるハードな人達から始まった系譜は、紆余曲折を経て、明るいところに躍り出たみたいだ。

時代の移り変わりは激しい。

今の時代ならネットで動画や情報を共有し合えるので、それはそれは楽しそうだ。なんとも羨ましいかぎりである。

 

 

弟は無事社会人となり、引っ越した。

置き土産は新劇場版Qのアスカのフィギュアであった。

今、植田正治の写真の前でポーズをとっている。