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脳内バックパッカー

自宅にいながら映画や本の世界で旅をしよう

『蒼天航路』は歴史漫画の最高到達点!これ以上も以下もなし!ならばよし!

マンガ

三国志、それは男のロマンと歴史の面白さ(過ぎ去りし第三者としての)が満載のフィクション多めのノンフィクション。

この偉大なる物語を究極の形にまで昇華しきっちまったのが『蒼天航路』である。

 

 

極厚 蒼天航路(1) (KCデラックス モーニング)

蒼天航路の主役は魏を打ち建てた「曹操」。

本場中国ではもちろん日本でも悪役中の悪役なイメージが濃厚。

横山三国志だったら「げぇー」を連呼してとにかく逃げまくるお茶目なやられキャラでもある。

正史や演義でも「喉が渇いたら梅を妄想すればいいじゃないの」とかいったり、神木を切って血のような樹液が出てもケラケラ笑っていたり、匿ってくれた人を勘違いして殺した挙句バレたら面倒なのでその家族や使いっ走りまで皆殺しにしちゃうサイコパス野郎として描かれることが多い。

 

そんな悪役であり劉備の引き立て役にされている曹操の虚像を打ち破ったのが、現代の陳寿こと王欣太先生だ。

 

ここで描かれる曹操は、「悪」である。でもその「悪」は合理的な必要悪なのだ。

黄巾の乱で人口の80%が死んだという説があるくらいの乱世を沈めるために必要とされる悪であり、乱世の奸雄そのものの姿が蒼天航路の曹操を形作っている。

 

 

 

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腐敗した漢帝国を「ならばよし」で叩きのめし、董卓や呂布や袁紹といった強敵=古い時代を打ち破り、劉備や孫権という新時代の覇者と熾烈な戦いを繰り広げた曹操の人生が、ここまで壮大に描かれ、それが日本語で読めるというのはまさに三国一の幸せものである。

 

蒼天航路は戦争よりも、曹操の卓越した人材掌握術と全く新しい政治の確立を主として構成されている。

スーパーリアリストの曹操は、能力至上主義の人材と現実的合理主義の政治システムを武器に、自分よりも遥かに位も影響力もある強敵と戦っていく。

ここには時代の流れの変節、時代の転換期に必ず現れるドラマがある。いつの時代でもそうだが、項羽が負け、信長が光秀に殺され、ヒトラーが欧州の覇権を握りかけたのも、この時代の転換期をどう読み取るかという解釈と果断の実行力こそが歴史の勝者を決める。

曹操は時代が求める革命家でもあったのだ。だからこそ旧勢力の代表である貴族や儒家と衝突し、そこにまたドラマが生まれる。

 

 

 

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蒼天航路は曹操以外の描き方もとにかく素晴らしい。

野蛮で強欲な董卓をさらに危険度を増して描くことで時代の簒奪者としての狂気の像を創りだした。

猛将呂布を抑えきれない武の衝動として描き、歴史を逆行していくものとして袁紹を激変させた。

 

 

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特に劉備という正義の像をぶち壊したところが、歴史好きとしては嬉しい限りだ。

なんせ劉備は人生の8割は居候の疫病神。劉備が取り憑くところは全て焼け野原になる。なのに今までの劉備の描かれ方といったら、まるで聖人君子、負けても負けても彼の聖性は微塵も欠けることがない。

蒼天航路の劉備は彼のご先祖劉邦に近い。ニートとヤクザの中間で、器だけがデカイらしいが何をやったら良いのかよくわからないというあの劉備の優柔不断の女々しさが滲み出ている。

あの母性をくすぐる感じこそ、劉備の魅力ではなかろうか。

そう、男にも母性はあるのだよ兄者!

 

蒼天航路は時代の転換期を戦争やロマンちっくな友情で覆い隠さず、政治や世相をうまく利用して「道理」を読者に頷かせるという歴史漫画・・・いや歴史の表現方法の傑作といえる。

 

※個人的には長坂の戦いの張飛が好き。あれぞ万民納得の俺達の張飛です。あと孔明ファンはびっくりこくぜ!張遼と甘寧なんかも最高だなあ~。もう一回全部見よう!

 

 

蒼天航路 VOL.1 [Blu-ray]

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