『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』はコミュニケーションマニュアル本として読め!
現代人のストレスとは、ほとんどが人間関係だ。
特に会社では複雑な「仕事」をするために、多様かつ目的が違う人々とともに行動しなくてはならない。
そんな職場の人間関係の悩みを解決するツールとしてオススメなのが、『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』である。
著者のブログのこちらの記事がバズったので本になったとか。
こちらの記事だけでも有用だが、本は物語調でわかりやすく解説してある。
そんな本書だが、あくまでもコミュニケーションツールであると思って読んだほうが良い。
天才や凡人というのは一種の比喩であり、ようするに個人の目的意識やコミュニケーションの軸が違うことをまず認め、その中で円滑に人間関係を築くにはどうしたら良いかを綴ったマニュアル本だと思ったほうが良い。
ということで、レビューとマニュアル本としての使い方を書いてみる。
天才、秀才、凡人
天才=創造性
独創的な考えや着眼点をもち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる
秀才=再現性
論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる
凡人=共感性
感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける
本書ではこのように人間を分けて考える。
だがこれは能力の割合の話であって、天才=創造性100%という意味ではない。
誰しもがこの3様の能力を持ち合わせており、その割合の違いによって仕事の取り組み方やコミュニケーションが変わってくるという話。
個人的にオモシロイと思ったのは、「軸と評価」について。
友人にいくら野球の素晴らしさを語ったところで、そもそもスポーツに興味がない人とは会話が成り立たない。
これはスポーツに対する興味関心の軸の違いが決定的なのに、野球が好きか嫌いかの評価を変えようとするために起こる。
天才、秀才、凡人は、この軸が違うためにお互いが理解できない状況にある。
だからまず他者は理解できないということを認め、相手の軸に合わせてコミュニケーションを図ろうというわけだ。
そして事業は、天才が生み出し、秀才が管理運営し、凡人がフォローするという流れになる。
この過程で、天才が殺されるというのが本書のストーリーだ。
天才が生み出したものはたしかにすごいが、それを金に変え、事業を継続していくには秀才の論理的な管理能力が必要だ。
この創造性と再現性は折り合いをつけるのは難しい。ここで絶対的多数の凡人を引き込むためには、説明力が求められる。
しかし天才の創造性はこの説明力に欠ける。ジョブズがアップルから追い出されたのも、ジョブズの創造性がジョン・スカリーの論理的な説明力に負けたからだ。
なんせ説明力は数字や統計を使った論理性がある方が圧倒的に有利だ。ピカソの絵がなぜ素晴らしいのかと、数学の証明とでは圧倒的に後者のほうが理解しやすい。
結果として、創造性は論理的説明と多数決により敗北してしまう。これはベンチャー企業が大企業に成長すると創造性が低下するのと同じ構図だ。
ちょっと面白い見方をすると、これは政治にも言えると思う。
例えば日本の幕末のような激動期を例にしよう。
天才=吉田松陰
秀才=大久保利通、木戸孝允など
天才吉田松陰が、当時の人間では考えつかないような思想を生み、破天荒な行動により攘夷の機運を高める。
が、吉田松陰の思想は過激すぎて凡人にはついていけず、結局天才は殺される。
その後、吉田松陰が生んだ時代の空気を、大久保利通や木戸孝允などの秀才が「凡人の多数決を勝ち取るため」に論理的に構築し、明治維新を成し遂げた。
ナポレオンやロシア革命なんかも同じような構図に見えてくるので歴史好きには面白い。
ツールとして実践するには
本書の人間分別は、全くもって科学的エビデンスは無い。
が、非常に納得できる内容だ。
人にレッテルを貼るのは良くないと言われるが、この分別方法をコミュニケーションツールとして利用するのはビジネスに限らず有用だと思う。
①自分はどのタイプなのか?
まずは自分を知ることだ。
自分のタイプを知れば、今までコミュニケーションで失敗した理由がわかってくる。
ちなみに僕は秀才タイプだった。※本書には簡単な質問でどのタイプに当てはまるか教えてくれるテストがある
そして今までコミュニケーションで失敗したのは、決まって凡人タイプだということだ。
ちなみに秀才=有能という意味ではなくて、論理的思考が軸のタイプだと思ったほうが良い。
僕の場合は、仕事上の人間関係など本当は正直どうでも良い。ビジネスライクに努め、くだらない愚痴飲みニケーションは噴飯モノだし、早く帰って家族や趣味の時間を有効に使いたい。
なので、基本的に僕はあらゆる仕事を効率化することに務める。基本的に、僕のようなタイプからみると会社は非常に非効率的だ。
ということで効率化を推し進めるのだが、根回しが面倒なのでいつも古参社員などの保守派と対立する。だが今思ってみるとこの保守派・老害だと思っていた人たちは、凡人=共感タイプだった。
僕の効率化は、経営者や同じようなタイプの人間には評価されていたが、この共感型人間にはついていけないらしく、決まって足を引っ張られた。
もちろん日本の会社は空気を読み読み共感型経営なので、経営者や管理職も最終的破局期には味方してくれない。
気付けば経営者は効率化が図れてしかも悪役は僕に押し付けられたのでめでたしめでたしなのだ。
本書に出てくる悪役が皆、秀才タイプなのは日本の社会なら必然だろう。
とまあ愚痴はこれくらいにしておいて、自分のタイプを知ることで、コミュニケーションに対する傾向を理解できる。
たしかに僕は効率化を求めすぎてコミュニケーションがおざなりだった。個人的には効率化=善だから良いだろうと放っといておいたが、そうではない人もたくさんいるのだ。
まずは自分がどういう軸を持っており、それを他者に押し付けていないかを知ることが大事なのだ。
②自分の武器は何か?
しかしその個性は武器にもなる。
僕の非人道的論理的効率化は、一部の人からはかなり感謝された。
なんせ残業が無くなり、仕事に余裕ができるからだ。同じタイプの人間、もしくは子育て中で生活が忙しい人には感謝された。
天才タイプは、こういった仕事に意欲を感じないだろう。効率化への改善はたしかに創造性がないこともないが、決まった枠の中での作業だからだ。
凡人は共感を大事にするので、人間関係に波風が立ちやすい仕事は拒否するだろう。
このように、タイプにより特化した能力=武器は組織を運営する上で重要で、そのどれもが必要となる。
というか、これって武器なのだろうか?
僕はこの武器が、先程のコミュニケーションの軸の話と同質に見える。
これは「対象に対する捉え方」という軸の違いだと思えるからだ。
秀才タイプは、仕事という対象に対し、論理的な視点で望む。仕事の総量を確認し、どのようなサイクルで、どのようなシステムで、どのような・・・といったように、データ化して最適解を探そうとする。
凡人タイプは、まず人間関係があり、空気を読むことを優先する。
天才タイプは、対象に対し、より社会を良くするにはどうしたら良いかという視点で立つ。
このように、対象=仕事に対する軸の違いが、ここに書かれている個性となっているのだ。
結局、仕事をどう見ているかなのだと思う。
僕の場合、仕事とは処理するものであって、如何に効率よくするかを考えることが楽しかったりする。システムの穴を探すことが楽しいのだ。
まあ、そもそも労働意欲皆無なので、如何に楽に適当に処理して早く帰るかがモットーになっているけど。
③相手がどのタイプなのか?
職場の人間関係などどうでも良くてとにかく効率よく済ませてしまいたい僕のようなタイプは、このコミュニケーションが非常に面倒くさい。
かといってコミュニケーションできないと、効率化は不可能だ。
コミュニケーション障害なんて言葉があるが、共感力を左右するのは「対象を理解する気があるかないか」だと思う。
対象を理解するには、まず自分を曝け出さないといけない。これがハードルが高い。恥を掻くかも知れないし、プライドが傷つけられるかもしれない。
結局、コミュニケーションが下手な人というのは、対象を理解するための様々なリスクを恐れているのだ。
こうして勝手な判断でレッテル張りをして、相手を知る努力もせずにコミュニケーション不全に陥る。
これまさしく僕なんですけどね。
ここでこの本の登場です。
勝手なレッテル張りは、負の感情から始まっているので、コミュニケーションの動機にはなりづらいし、そもそもストレス。
なので、この本のタイプに合わせてレッテル張りをする。
天才や秀才や凡人だけでなく、創造性・再現性・共感性の能力値をRPGのパラメーターのように振り分ける。
そうすれば、対象をある程度客観的に評価できる。負の感情からのレッテル張りは完全に当てこすりの主観だが、パラメーター振り分けレッテル張りであれば、ひとまず相手を知ろうという冷静さを持ち得る。
例えば、A上司はゴマすりと責任逃れだけで生きているなと思えば、「創造性0・再現性3・共感性7」とか。10点を振り分けたり、各10点満点でも良い。
これである程度タイプを決めて、そのタイプに合わせたコミュニケーションを取れば案外うまくいくようになる。
なんせ今までコミュニケーションというか思考の軸が違ったのだから。
もちろんこのパラメーター振り分けレッテル張りは、ある程度の経験が必要だろう。
しかし、面倒だった人間関係がポケモンみたいになって多少楽になった。
④相手は何を欲しがっているか?
パラメーター振り分けレッテル張りが終われば、今度は相手が何を欲しがっているかを考えよう。
先程のポケモンで言えば、炎タイプのポケモンは草タイプに強く水タイプに弱い。この特性をうまく利用して、コミュニケーション・じゃんけんで打ち勝つのだ。
本書でも少しこのタイプ別の欲しがっているものが書かれている。
天才タイプは、創造性豊かだが、逆に他人に理解してもらえないことに悩んでいる。なんせ創造性は数値化し辛いからだ。だから創造性を評価してあげると喜ぶ。
秀才タイプは、論理的思考が得意なので逆に喋らせる。この「案件についてどう思うか」と聞かれた場合、以前その秀才タイプが話していた内容を挙げたあと、「もう一度教えて欲しい」と聞けば気を良くする。
共感タイプは、仕事の話より人間味ある話を聞いてやり、共感してやる。
またタイプにより相関関係がある。
天才タイプは、絶対多数の共感タイプに理解して欲しいが、秀才タイプには興味がない。
秀才タイプは、天才タイプに憧れと嫉妬心があり、共感タイプを見下している。
凡人タイプは、秀才タイプは勘違い野郎だと思っており、天才タイプは理解できないから排斥する。
この相関関係もうまく使えば、よりコミュニケーション勝者になれる。
今までの僕は、この相手のタイプを知ろうともせず、相手の欲しがっていることなどガン無視していた。
コミュニケーションが面倒だという人も、この相関関係を使えばマニュアルのように会話ができるのでだいぶ気軽になるのではないだろうか。
まとめ
まさにコミュニケーションマニュアル本だと思わんかね。
たしかになんのエビデンスもないレッテル張りでしかないが、人間簡易スケールのように使いやすい設定だ。
これがうまく当てはめることができたのであれば、システマチックに人間関係を俯瞰してみることができるので非常に楽ちんだ。
そして相手が求めているもの、相手の思考パターンなどを客観視し、最適解な返答ができるようになる。まさにオートマチックコミュニケーション!
しかし重要なのは相手への興味だろう。結局、相手あってのコミュニケーションなので、主観的な視点だけでは感情が先走ってしまう。
この本の最重要な視点とは、「人間の特性をパラメーター化してしまえば、人間関係を理解できる」という謎の自信を持つことができることだ。
「はは~ん、貴様は秀才タイプだな。しかも共感よりの」と、誰でも名探偵コナンになれる。そうして相手への神の視点=マウントポジションを取れるという幻想を手に入れることで、コミュニケーションにありがちな緊張やストレスを和らげるという効能がある。
個人的には、もっと酷いレッテル張りをして対人関係に対処していたが、総じて失敗に終わっていたため、この優しさ満ち溢れた人間簡易スケールを利用していこうと決心したわけだ。
かくいうあなたは何タイプ?
おすすめリンク
nounai-backpacker.hatenablog.jp
結局息苦しいのはシステムが原因なのか?
nounai-backpacker.hatenablog.jp
そんなあなたにド田舎暮らしという提案