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脳内バックパッカー

自宅にいながら映画や本の世界で旅をしよう

Amazonプライムビデオのおすすめ映画「アメリカン・ビューティー」

映画

アメリカン・ビューティー (字幕版)

40歳を過ぎた広告マンのレスター・バーナムと上昇志向たっぷりの妻キャロリン。彼らの家庭生活に潜む歪んだ真実が徐々に暴かれていく。妻は夫を憎み、娘のジェーンは父親を軽蔑している。そして会社の上司はレスターにリストラによる解雇を告げる。そんな毎日に嫌気が差したレスターは、人生の方向転換を図る。しかし、自由と幸せを求めるレスターを待ち受けていたのは、あまりにも高価な代償だった。
主演: ケヴィン・スペイシー, アネット・ベニング

再生時間: 2 時間 1 分

 

ついにAmazonに骨を埋める決心をしたので、Amazonプライム会員になったのだが、プライムビデオがかなり良い!

実質月額300円ちょいで良作が見放題!

期待していなかっただけに、見たかったけど借りるのに躊躇していた映画がてんこ盛りなのには驚いた。

ということで映画漬けな毎日、せっかくだからプライムビデオのおすすめ映画を語ってみよう!

 

 

アメリカの病根・・・と見せかけて

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よく「アメリカの病根」を描いた!とか社会風刺的映画扱いされているが、僕はまた少し違うと思う。

そもそも監督サム・メンデスはイギリス人だ。

サム・メンデスといえば007 / スカイフォールの監督なので、これまた感慨深い。

 

簡単なあらすじは、アメリカのとある中流家庭の崩壊が主題となっている。

 

主要人物は、

働く意味どころかなぜ生きているのかわからないくらい人間として昏睡状態な中年パパ。

 

キャリアアップを目指して猛烈にアタックしては砕けていく働くママ。

 

そんな両親に辟易しながら容姿コンプレックスにも苦しむ中2女病の娘。

 

この3人家族を取り巻く人達によって、表面上体裁の良い家族が少しずつ狂っていく

 

アメリカの病を抉り出したと言われるのは、核家族化、不況、格差、ゲイ、DVなどなど、数多ある問題をこの家族目掛けてぶっかけたところだろう。

とにかく濃い面子がこの家族の周りに現れていく。

 

そしてこれはアメリカだけの問題ではないというのが、徐々に明らかになっていく。

 

 

パパの崩壊

真面目で中年太りのパパは、妻にも娘にも愛想を尽かされていた。

仕事も年下の上司の横暴が気に食わない。

唯一の生きている瞬間は朝シャンしながらの◯◯である。

悲しすぎるぜ!親父!!!

 

 

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そんなパパの前に突如現れたのが、娘の友人アンジェラちゃんである。

自らの美貌に絶対の自信があるアンジェラちゃんは、遊び心で友人のパパであるレスターを誘惑する。

パパはよりによって娘の友人に欲情するのだ

さらにアンジェラちゃんに好かれたいために、筋トレまで始める。

泣けてくるぜ!おっさん!!!

 

パパはそんな中で20年ぶりに昏睡状態から目を覚めるのだ。

生きているのに生きているのかよくわからないという感覚をパパは「昏睡状態」と称した。

この昏睡状態こそがこの映画の真の主題である。

 

 

社会が産み出す「生きているのに昏睡状態な感覚」

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真面目で成功者の部類に入るこの家族の主であるパパ。

だが仕事ばかりしていていつの間にか、妻を女性と見ることもできず、娘のことに興味が湧かない、無感動人間になっていた。

その仕事すらとっくの昔にやる気がなくなっていた。

ただただ時間だけが流れていく感覚、流れ行く小川の中に佇む石、そんな感覚が「昏睡状態」なのだ。

 

そんな環境が何もかもが破綻しそうになった時(リストラ話)、パパはアンジェラちゃんに欲情を感じたのだ。

パパは欲求の中でも最低辺の低俗扱いな性欲によって、目をさますのだ。

パパは体を鍛え始め、若いころの「悪さ」であったマリファナに手を出す。

パパは過ぎ去った時間を取り戻そうと、急激な若返り=赤ちゃん返りを始めるのだ。

 

そんなパパを見て家族は戸惑い、批難する。

「一家の主として振る舞え」と。

しかし、パパから言わせれば「一家の主として振舞っていた結果」が「昏睡状態」だったのだ。

 

パパはそんな家族を顧みず、会社を脅迫して金を巻き上げ、好き勝手暮らす。

端から見れば病気にでもなったような変わりようだが、さすが名優ケビン・スペイシー、むっちゃ活き活きとしてくるのだ。

ライザップばりの肉体変化だが、それは誰にでもできる。

表情が徐々に変わっていくのだ。

 

この辺はファイト・クラブに近い。

ファイトクラブは「消費社会や広告との決別」=「昏睡状態からの脱却」であったのに対し、

アメリカン・ビューティーは「世間体との決別」=「昏睡状態からの脱却」であった。

どちらも似通っているが、アメリカン・ビューティーのレスター・パパにはタイラー・ダーデンはいない。

パパ自体がタイラー・ダーデン化していく。

 

 

ここで「昏睡状態」とは、「社会に適応していくために捨て去ったもの」が大きければ大きいほど症状がひどくなるビョーキなのだと思った。

パパはそんな捨て去ったものを一つずつ拾っていくように変わっていき、そして活き活きとしていった。

ファイトクラブは原始的な欲求である「破壊」や世にツバ吐く「おふざけ」を使った荒治療であったが、アメリカン・ビューティーは自分が社会に囚われる前の輝いていた姿に戻ろうとしていく。

パパは「若さ」「女」「マリファナ」「ハンバーガーショップでのバイト」などのアイコンをもう一度手に取り、生きている自分を再獲得していこうとした。

 

そんな中で悲劇が・・・・

 

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家族の崩壊

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※ここからネタバレ注意

 

「パパ」という存在の崩壊から、一気に家族の勢力均衡が破壊される。

ママは商売敵であり内心尊敬していた「デキる男」と浮気に走り、娘は親友であり内心コンプレックスの発生源であったアンジェラちゃんと喧嘩をしてしまう。

 

娘を変えたのはパパだけでなく、隣人の怪しいボーイフレンドだ。

彼は厳格な父親によって厳しく育てられ、その反動で傷害事件や薬物に走り、最近まで精神病院に入院していた。

ボーイフレンドは父親に従うふりをして、「父親を騙している自分」が唯一のアイデンティティ像となっている可哀想な青年でもある。

そんな青年は、コンプレックスまみれで鬱屈した娘の本当の姿だけを見てくれるナイスガイでもあった。

 

そして我等がアンジェラちゃんだが、完璧に見えて実は相当根深いコンプレックスに苦しむ幼気な少女でもあった

アンジェラちゃんは「普通」で無個性な自分が嫌いでたまらなかったのだ。

派手な異性関係を自慢していたが、実はその嘘は自分を人にさらけ出すことができないくらいナイーブな性格の裏返しでもあった。

 

念願のアンジェラちゃんと結ばれようとしたパパは、そんな彼女を見て気づくのである。

なんだ。みんな同じなんじゃないか」と。

アンジェラちゃんのような存在ですら、実際は不安でたまらないのだ。

パパがムキになって取り戻そうとしていた過去、栄光の若き自分は結局のところ今と変わらない、俺は俺なんだ!と気づく。

じゃあ俺はやっぱりダメな奴じゃん・・・ではなく、今の自分を輝かせようとしていない自分の愚かさに気づいたのだ。

 

そしてパパは一枚の写真を手に取る。

そこには仲睦まじい家族の笑顔があった。

パパにとって家族こそ、一番輝かせるべきものじゃないか!と思い出すのだ。

それは使命とか世間体ではなく、『愛』なんだ。

これは俺にしかできない、俺が輝く場所なんだ。

結局、スタート地点に舞い戻ったわけだが、パパはそんな自分も認めることができるのであった。

 

 

そして衝撃のラスト

そこにもうひとりのパパが現れる

隣人であり、娘のボーイフレンドの厳格な父親である。

厳格な父親として振舞っていたこのパパは、自信を失っていた。

軍人として社会的な体裁も良い厳格な家庭は、表面上問題が無さそうだが、内実は息子が何をしているのかもわからないほど疎遠だった。

 

不安でたまらない軍人パパは、息子と仲良くしている隣人レスター・パパを見て嫉妬する。実は息子がレスター・パパにマリファナを売っていたのだが、嫉妬と不安のため、軍人パパは取り返しの付かない勘違いをしてしまうのだ。

 

そして衝撃のラスト・・・

 

アメリカン・ビューティー (字幕版)
 

 

 

 

まとめ

崩壊していく家族像を主軸に、不安と戦う弱き人々をうまく重ねあわせた秀作であった。

ただそれだけでも良かったのに、最後に相反する父親像をぶつけあうのがまさにアメリカって感じだ。

あ、監督はイギリス人ですよ。

 

日本映画では「家族ゲーム」が近いように見えるが、あちらはモロに社会風刺的なのでラストはやはりあれが正解だろう。

アメリカン・ビューティーは個人主義が強いアメリカらしい映画でもある。

アメリカと日本の家族像の違いが見れて面白い。

日本の家族像はどうしても社会とかムラとかが付きまとうもんね。

 

そしてさすがのサム・メンデス。

演出家でもあるので、役者の演技が映えまくっていた。

特に主演のケビン・スペイシーの演技はオーラが見えそうなくらい穏やかな鬼気迫る感じがあった。

序盤の呆けたような顔とアンジェラちゃんを落とした時の自信ありげな顔、そして最後の笑み、もうこれだけでお茶漬け三杯はイケる!

 

あとアンジェラちゃんの小悪魔的演技は谷崎潤一郎先生が悶え苦しみそうなくらい良い!