Amazonプライムビデオのおすすめ映画「フル・モンティ」
前から見ようと思っていたけど、いつも後回しにしていた・・・
そんな映画を見れるってのも、Amazonプライムの良い所かもしれない。
今回はイギリス映画「フル・モンティ」をやっと見ることができたので、ちょいと語ってみよう!
おっさん達がフルチンになるまでの物語
この映画は要約すると題名通り「フル・モンティ=フルチン」であり、この冴えないおっさん達がフルチンになるのを今か今かと待ち望む、ただそれだけの映画である。
だがそこには哀愁ただようオヤジたちの生き様があるのだ。
このおっさん達は、イギリス北部の鉄鋼の町に住んでいる。
鉄鋼の町と言ってもそれはかつての話であって、今や産業は寂れ、町も運命を共にするように朽ちている。
このおっさん達は、そんな寂れ行く街と運命を共にした殉教者であった。
要するにニートである。
彼らは皆、仕事がなく、やる気もなく、毎日職安でフザケている。
そんな毎日を送っていた。
鉄鋼の町で鉄鋼業がダメになったんだから、まともな職があるわけでもない。
おっさん達は町とともに死んでいた。
ダメおやじの家族愛
主役のガズ (ロバート・カーライル)は、トレインスポッティング的ダメブリカスおやじ。
ちなみにロバート・カーライルはトレインスポッティングにも出ていて、そっちではもうダメ人間超えてサイコパスになっている。
ガズはクビになった挙句、妻とも離婚し、愛する息子を奪われていた。
再婚した妻の新しい夫は縫製会社の経営者。
養育費すら払えないガズは、愛する息子と会うことができなくなってしまう大ピンチに陥る。
だがそれでもまともに働く気はさらさらないガズは、町で見かけたマッチョなイケメンダンサーのストリップショーが大盛況なのを見て、「フル・モンティ」で一攫千金を狙うのであった。
この不器用なガズを何故か慕う息子。
というかダメな父親をほっとけないのだ。
こういった離婚した両親の間で振り回される子供ってのは、受身的で本心を押し殺してひたすら見ないふりをする描写が多い。
だがこの息子は両親の間をふらふらっとまるで遊んでいるような自然体でいる。
頼りない父親といるのは面白いし、かと言って母親や新しい親に徹底反抗するわけでもなく、自分の思うがままに接している。
一攫千金を狙う無職オヤジたち
ガズの野望に相乗りするのは、これまた濃厚な哀愁に満ち満ちたオヤジたち。
デイブ
太っちょのデイブは失業のせいで自信喪失し、それでも愛してくれる妻を正視することができないでいた。
妻はデイブを勇気づけようとするが、その全てが逆効果でデイブを苦しめる。
ああ、わかる!この男と女の決定的な違い!
男は「自信喪失=情けない」なのだ。女性のように悲嘆に暮れたりヒステリーを起こしたりするわけでもなく、ただただ自分の不甲斐なさでモヤモヤする。
そのモヤモヤを同情という最悪な優しさで包もうとする妻。
違うんだ!男はこういう時はほっといてもらいたいのよ。
男の自信喪失ってのは、生理みたいなもんだから。
ジェラルド
ガズの元上司。高給取りで良い暮らしをしていたが、彼も漏れなく無職。
しかしそのプライドから、妻にクビになったことが言えないでいる。
妻はそんなことは知らずに、以前と変わらない暮らしを続けていた。
再就職は決まらず、クレジットカード決済の日が近づき、彼は大いに焦りだす。
過去の自分となかなか決別できない頑固親父。
その他は、ダンスキレキレだけど腰痛持ちの黒人の老親父、病弱な母と暮らし自殺未遂までしたヤサ男、何も取り柄がないがイチ◯ツだけはメガトン級なナイスガイ。
こんな感じの駄目なオヤジたちがフル・モンティになるのだ。
だがこのダメおやじ達のおやじ臭いおやじ涙ぐましい努力は、見るものを突き動かすのである。
なぜオヤジはフル・モンティになれたのか?
だがそもそもマッチョイケメンのストリップショーをこんなおっさん達で真似るのだ。
かなり無理がある。
しかもお客は「ご近所さん」なのだ。
なぜ地元の劇場でやるんだ!おっさん!
いや、おっさん達はこの寂れた町を愛し、そしてこの寂れた町でしか生きられないのだ。
そんな悲しいおっさんの姿、でぽっとしただらしない腹、ハゲた頭、たるんだシワ、そのすべてが人生を戦っている生きる人間の美しい姿でもある。
この映画は単にハートフルコメディではなく、人間の決心の揺らぎをうまく捉えている。そこに我々は笑いながらもちょっと感動するのだ。おっさんのハダカ姿に。
おっさん達は「諸々の事情を解決してくれる金」と「人様にみっともない姿を見せる」を天秤にかける。
結局カネかよ!となりそうだが、結局カネだろ!
キレイ事ばっかり言ってる奴に限ってろくな奴じゃない。
ベッ◯ーやファンキー◯藤を見よ。あの人達はビジネスで善意を売っていた。だからこそ、その商品を汚したから叩かれている。
でも叩いている側はどうなんだ?
そんなことを言っていると何もできなくなってしまう。
ネットのおかげで一億総監視社会になってしまった。
足の引っ張り合いで絡まりすぎた現代人は、ひたすら鬱々と日々を過ごしている。
そんな生活にスパイスを与えてくれたのが、◯ッキーやファンキー加◯なのだ。ゲリラ豪雨みたいなもんだ。
フル・モンティのおっさん達はどうだろう?
彼らは生活のために、家族のために、生きるために必要不可欠な金を得るために、脱いだ。
至ってシンプル。そこには簡単な引き算しかない。
彼らは嘘偽りを脱ぎ捨てて、金を得るのだ。
これはなかなか難しい。
だからこそ、その葛藤に観衆もドキドキするのだ。
金を得るためには何をしてもよい!という意味じゃなく、金を得るためにここまでしなくちゃならない!という現代人の生き様が見える。
働くことに逃げている現実逃避おっさん達が、働く=お金を得ることの大変さをスカッと教えてくれる。
一攫千金もまた汗をかかなければならないのだ。
楽して生きるってのは難しい。
そして普通に生きるってのも難しい。
おっさん達は、社会で生き抜くために強いられる妥協の象徴なのだ。
だが、その妥協と大多数の人々はなんとか付き合っている。
それを隠したり、発散させたり、昇華させたり、耐え抜いたり・・・
世界中のおっさんはみんな大変なのだ。スーパーマンやIT社長ばかりが世の中の主人公ではない。
おっさんのフル・モンティが我々にこう投げかける。
「カッコイイとは、こういうことさ!」
おっさん!最高だぜ!
まとめ
コメディにして大人の男の生き様も垣間見れる・・・
フル・モンティは『ハードフルコメディ』である。
こういうイギリス映画のブルーカラーやニートたちの会話ってのはなんであんなにカッコいいのだろう?
アメリカとは違う、サッカー+女王陛下ジョーク+お下劣下ネタバカ話ばかりなのにどこかインテリチックなニオイが微かにするのだ。
さすが紳士とブラックジョークの国。
しばし映画漬けの日々、嗚呼幸せ。