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面白すぎる歴史本「金融の世界史」「日本人のための第一次世界大戦史」

世界史を効率良く面白く勉強するのに最適な本は「板谷くんの本」である。

最近のマイブームは板谷敏彦氏の歴史本。

金融畑出身の氏の本は、経済や金融を土台に、貿易や科学技術の発展等を踏まえて、しかもわかり易い文章で世界史をまさに描いている。

これがWikipedia的な知識欲の展開と、それをうまくまとめるという超難作業を完ぺきにこなしているので、世界史を学びたい・学び直したい人には特にオススメである。

 

目次:

 

金融の世界史 

金融の世界史: バブルと戦争と株式市場 (新潮選書)

金融の世界史: バブルと戦争と株式市場 (新潮選書)

 

世界史を金融で語るマルクスが好きそうな題名ではあるが、中身は経済活動全般をうまく絡ませ合うことで、人類の歴史をまとめあげている。

マルクス=経済みたいな認識があるが、マルクスは人と人の間の関係を主軸とした歴史観を創生した。だが、あのクソ難解な「資本論」の文章からは、人との関係をぶち壊すのにうってつけである。

この本は、この人と人との関係が生産・交換・経済活動・金融と進んでいく様を小ネタも挟みながら描いている。

この本を読めば、金融とは人類が生み出した最高傑作であり、最も人類らしい発明であると思えるだろう。

 

なぜヨーロッパが覇権を握ることが出来たのか?

金融の歴史の主役は西ヨーロッパの国(に住むユダヤ人)だ。

金融の歴史は、金融を発明し、それを成熟させることで覇権を握っていった欧米の国々の移り変わりが生々しくてたまらない。

そして金融の歴史を学べば、長い間世界史の端っこのド田舎でしかなかった西ヨーロッパが、長い間世界史の主役であった四大文明を植民地にできたのかがわかってくる。

 

スペインの新大陸発見により西ヨーロッパに莫大な富がもたらされると、富はさらなる富を産むために様々なシステムが作られていく。※前段階としてルネサンス期のヴェネチアなどですでに金融の基本は出来上がっていた。

新大陸への船の旅は危険であるが、成功した暁には莫大な富がもたらされる。しかしその船出までには莫大な資金が必要であるし、いざ出航しても船が沈没すればすべてがパーになってしまう。

そこで西ヨーロッパの人々(だいたいユダヤ人)は、「投資」を利用した。保険や株や金融はまさしくその申し子だ。株で大人数から資金を作り、巨大な船を買って人を雇い、航海が成功した際には儲けの配分を行う。沈没した時の損害保険を作り、国際金融市場で資金を集め管理しやすい環境を整えた。

 

他の地域でも、投資は行われていたが、西ヨーロッパの投資術は富が富を産む装置として秀逸だった。

そこで同時代、西ヨーロッパよりも遥かに大規模の艦隊を持っていた中国と比較されている。中国はアヘン戦争までの間、世界でも常にトップのGDPを誇っていた。だが、富を得るために環境を整え、富を増やすために科学技術や法制に磨きをかけていった西ヨーロッパと違ったのは、簡単に言えば中国は自らの地位に満足だった。

西ヨーロッパの人々がハングリー精神で新大陸へ進出したのは富を求めたからだが、中国は自分たちは世界一の富める国であると自認していたからこそ、そんな冒険主義に陥らなかった。

これが東洋と西洋を分けた。西洋は航海で得た富と知識を科学技術へ投資した。それはさらに儲かる可能性があったからだ。

だが東洋の雄・中国は、中華思想(中国がナンバーワン)のため、他国から学んだり冒険主義や金儲けに走らなくても良かった。当時の中国ほどの高度な文明では、高度だからこそ現状が最良であり、抜本的な改良の必要感は希薄であった。

 

これが一番わかり易いのが日本の明治維新である。

江戸時代、鎖国政策(最近はそう言わないようだが)で僅かな国々としか交流のなかった日本は、アヘン戦争で東洋の親分・中国が同じ小さな島国であるイギリスに圧倒された姿を目にして驚愕し、さらに蒸気船という当時最先端の科学との会合=黒船来航により、基本概念が完全に瓦解してしまった。

日本はそこですぐさま社会改革を断行し、欧米列強の帝国主義の手から何とかすり抜けることが出来た。そこからはプライドも捨てた西洋化が始まる。

ここが日本と中国を分けたポイントである。

 

金融を制するものは世界を制す。17世紀のオランダから、イギリス→アメリカと世界覇権国家の地位は移っていった。

世界覇権国家になるには、その国が金融の中心地になることが必須条件である。現在の覇権国家であるアメリカのニューヨークがそうだ。

複雑化した金融の歴史は、幾度もバブルのような危機を乗り越えながら、共産主義との戦いにも勝ち、グローバリズムの結果、さらに肥大し続けている。

 

金融の世界史」というからには、さぞ難解な経済学用語で溢れているのかと思いきや、ここまで述べたような「歴史のなぜ?」を説明するのに金融は最適だということに気付かされた。

 

 

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日本人のための第一次世界大戦史 

日本人のための第一次世界大戦史 世界はなぜ戦争に突入したのか

日本人のための第一次世界大戦史 世界はなぜ戦争に突入したのか

 

極めつけはこちら。

これはここ数年の中でもトップ3に入る名著であり、学校の教科書にしたいくらいである。先程の金融目線の歴史で、あの非常に難解な第一次世界大戦に挑む。

 

第一次世界大戦は、数千万人の死者を出し、ヨーロッパ中を荒野にし、そして現在の様々な紛争の原因を量産し、挙句の果てにヨーロッパがずっと手にしていた世界の覇権の地位をアメリカに奪われるという結果に終わった。

大規模な戦争が100年近く無い平和なヨーロッパで、なぜあのような大戦争が起きたのか?ヨーロッパの国々は、結局何ももたらさず、しかものちにさらなる悲劇を迎える温床ともなったこの大戦争がなぜ起こったのか?

日本人にはわかりづらい、第一次世界大戦を学ぶには最適の本であり、近代史はこの一冊で賄えちゃうコスパ最高の本でもある。

 

 

国民国家

この本の面白いところは、第一次世界大戦の発端がサラエボ事件だよなんて素直なスタートを切らない。

話はビスマルク健在のドイツ統一から始まり、金融や技術の発展、戦術や新兵器の開発といった具合に、第一次世界大戦より遥か前から少しずつ開戦の理由を回収していく。

全部読み終えて結局のところ、超大国イギリスと新興国ドイツの覇権争いが様々な国や地域を巻き込んだ挙句、爆発したのが第一次世界大戦である。

ナポレオン戦争後、散り散りだった諸侯をやっと統一し、一気に発展していった新興国ドイツは、人口と技術力を武器にイギリスを超えるまでに成長し、近代化に成功する。

 

当時の近代化とは、国民国家の形成が第一項目だ。

日本の富国強兵策がまさにそれで、「国家」という概念が希薄だった当時の人々にナショナリズムを煽ることで一体感を強め、経済と軍事力を強めていく。

当時は戦争技術が発展し、巨大な戦艦を筆頭に莫大なカネがかかるようになっていた。軍拡競争の始まりだ。弱肉強食の帝国主義では、軍事力こそが国家の生命線であった。日露戦争では、日本は国家予算の五割を戦費に当て、さらに多額の借金までして何とか戦った。

結果、軍拡競争のための資金つくりのため、生産力・技術力を上げることはもちろん、金融の世界でも戦わなければならない。これにより、国民総出で国家のために働かなければ、競争についていけないようになってしまう。これがのちの総力戦体制につながる。軍人同士の戦争が、国家全体の生産力のぶつけ合いになっていった。

総力戦体制では、徴兵制や労働力としての民間人の協力が必須となり、そのため国民の権利が強くなっていく。政府は多額の軍事費を賄うために、国民の気を伺うようになり、これにメディアが火をつけることで危険なナショナリズムの高揚に繋がる。

 

 

総力戦 

軍拡競争から生まれたナショナリズム、仮想敵国への恐怖感、民衆の不満は、最終的に戦争へ向かうことになる。

統一の遅れたドイツは経済力でイギリスを追い抜くまでに発展したが、世界に目を向けると植民地になりそうなところは全てイギリスとフランスに抑えられていた。

アガディール事件などで英仏と敵対したドイツは、英仏露に包囲されているという危機感が募り、それを不安を利用して軍事力増強を狙うルーデンドルフなどの軍人や右翼団体が暗躍する。

さらに日露戦争に敗れたロシア、多民族国家ハプスブルクやオスマントルコ内の独立問題などで、ヨーロッパのパワーバランスが大きく崩れていた

サラエボ事件を機にバルカン半島を欲したハプスブルク、極東を日本・中東をイギリスに抑えられ東ヨーロッパにしか活路を見いだせなくなったロシア、それに英仏独の対立などなど、複雑な要因が重なる状況の中、ハプスブルクがセルビアへ宣戦布告を行う。

するとセルビアの同盟国ロシアはハプスブルクへ宣戦布告し、ハプスブルクの同盟国ドイツがロシアに宣戦布告し、ロシアの同盟国であるフランスとイギリスは・・・といったように一気に世界大戦へ向かうことになる。

 

 

誰も戦争になると思わなかった

だが当時、ナポレオン戦争以来100年間平和だったヨーロッパでは、誰も大規模な戦争にならないと信じていた。その通り、サラエボ事件からハプスブルクの宣戦布告を通しても、国際金融市場では特に変化が起きなかった。

が、ロシアの参戦が決まると話は違った。総力戦になれば、初期の行動が非常に重要だ。莫大な兵や軍事物資を鉄道などを利用し前線へ一気に運ばなければならないからだ。総力戦は一度スタートを切ると、止めることは出来ない。これにより、各国が総力戦計画を実施することで、第一次世界大戦が始まった。

誰もがクリスマスには終わると思っていた戦争は、機関銃により圧倒的に防御側が優位な状況、各国の鉄道インフラによる兵士物資輸送の効率化により、長い長い塹壕戦となった。

 

400pほどあるので、まとめるのが困難だが、まとめるのが困難なくらい無数の条件が寄り集まって起きたのが第一次世界大戦である。

当時は現在のようなグローバル化が拡大した時代であり、現在のように経済や軍事の複雑な要因によるパワーバランスの変化、グローバル化による諸問題への反動ナショナリズムの形成、それを利用するメディアや軍人や政治家、という構図だった。

そのため、第一次世界大戦勃発時でも、株価が動かず、人々も危機感がなかったというのも納得できる。イスラム国、シリア内戦、トランプ大統領誕生、中国の経済発展、北朝鮮・・・現在も危機は多いが、誰もが大戦争にはならないと思っているだろう。僕もそうだ。

 

当時の人も、

①経済的なメリットがない戦争は起こらない

グローバル化により、経済活動の多国籍化、国際金融の発展のため、戦争をしても経済的な損失が大きい。

②不安定な政府は戦争を避けるだろう

殆どの国が、社会主義思想の蔓延、民族紛争などを抱えていた。

③戦争は伝統的な外交戦略で回避できるだろう

この100年は外交で戦争が回避されていた

④どんな戦争もすぐ終わるだろう

知識層:総力戦はカネがかかるから続かない

大衆:突撃中心の戦争だからすぐ終わる

・・・と思っていたようだ。

だが、この全ては幻想であった。

 

特に重要なのが、国民感情の誕生だった。国民国家化、総力戦体制化のために大いに利用した国民感情だが、焚き付けるのは簡単だが実は沈静化が困難な代物だった。

これを学び、逆利用したのがヒトラーである。

 

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まとめ

 

あれほどの戦争がなぜ起きたのか、当時の各国の首脳陣ですらわからない人が多かったという。

社会の複雑化が原因のように思えるが、この本を読むと、とても感情的な部分が散見される。

国家がまるで人間のように振る舞っている。嫉妬や恐怖心から、後世から見てとても不可解な行動を国民の賛同まで得て実施している。

先程も述べたとおり、第一次世界大戦前夜の状況は、何だか現在の世界情勢に似ているように思う。

核兵器の登場で訪れた平和?のため、世界大戦は70年以上起こっていない。だが第一次世界大戦でのドイツのように、中国が急激に存在感を強め、アメリカを中心に危機感を抱いている。だが不安を煽りすぎると、今度はより過激な行動に出てしまうというのは歴史が教えてくれている。

そんな怖さも考えさせてくれる良書であった。

 

日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち (新潮選書)

日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち (新潮選書)

 

次の小遣いでこれを買う予定

 

 

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